• 素粒子チタン光触媒「REDOX」

酸化チタン表面の活性酸素

酸化チタンの活性酸素種は次のようにつくられます。

①酸素は(O2-)として吸着する。この時のマイナス電荷は(TiO2)から与えられる。(O2+ e→ O2
②(O2-)は光によって(TiO2)にできた正孔(h+)と反応して原子状酸素(O)に解離する。(O2 + h →2O)
③原子状酸素は電子(e-)と反応して(O-)となり離脱する。(O+ e → O
④原子状酸素はまた、(O2-)とも反応して(O3-)となる。(O2 + O–    →   O)

活性酸素種の反応性の高低

(O)はマイナス200度Cに近い低温でも反応性がある。

(O3)は原子状酸素よりやや反応性が低い。

(O)の反応性はかなり低い。

「光触媒とは何か」佐藤しんり著書より

忘れられた定義

酸素の光吸着によって酸化チタン上にできる活性酸素の種類と反応性は、定説になっていたことである。

ところが、光触媒の実用化がはじまった1995年以降に出版された光触媒の解説書の多くには、これとは違う光触媒酸化の仕組みが書かれている。即ち酸化チタン光触媒によってできる活性酸素は、ヒドロキシラジカル(・OH)とスーパーオキシドラジカル(O2-)だというのだ。原子状の酸素(O)については一言も触れられていない。

光触媒の商品化に伴い、インターネット上にも光触媒のホームページがたくさん開設された。どのホームページにも、酸化チタンの強い光酸化力を説明するために、スーパーオキシドラジカルとヒドロキシラジカルが活躍するイラストが書かれている。

それらによると、光触媒酸化の仕組みは次のようなものとされている。

光触媒が光を吸収して電子と正孔ができる。電子は吸着酸素と反応してスーパーオキシドラジカルをつくる。(図)

一方、正孔は水(水蒸気)と反応してヒドロキシラジカルをつくる。
化学反応式に書くと次のようになる。

O2 + e→ O2

H2O+ h+→・OH+ H

そして、これらの活性酸素が酸化反応を起こすというのだ。

この仕組みでは水がなければ正孔が反応する相手がないから、酸化反応は進まないはずだ。ところが現実には、酸化チタンによる光酸化反応は水がなくてもおこる。また水を加えても反応は促進されない。

こんなことは昔からよく知られていたことなのに、なぜ水を必要とする仕組みを考えたのか、じつに不思議だ。・・・

誤解のルーツ

1995年にカリフォルニア工科大学のホフマン教授らは、『半導体光触媒の環境への応用』という総説を書いている。この総説は、世界中で広く読まれたため、この論文の引用数は記録的な数字となったようだ。論文中には酸化チタン光触媒によってできる活性酸素として、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、ぺるヒドロキシラジカル、過酸化水素などがあげられている。しかし、原子状酸素など古くから知られている活性酸素種は書かれていない。ホフマン教授らは、もともとレーザーを使った光学反応を研究していた。その手法をそっくり光触媒の研究に持ち込んだのである。光化学反応の活性酸素をそのまま光触媒反応に持ち込んだのだ。

M.R. Hoffmann, S.T. Martın, W. Choi and D.W. Bahnemann, Chem. Rev. 95 (1995)
『TiO2光触媒の基礎と最新開発動向』正橋 直哉(東北大学)資料より

光化学増感と固体の光触媒反応を混同していることである。論文中では「光触媒は増感剤として振る舞う」と書いてある。

そして、酸化チタンに吸着している活性酸素は、正孔と吸着水素基との反応によってできるヒドロキシラジカルだけで、他の活性酸素は書かれていない。

固体光触媒によってできる活性酸素は、レーザーをあてればわかるようなものではない。彼らが活性酸素の分析をしていたとしても、それは光触媒に吸着した活性酸素でないことだけは確かだ。レーザーという超強力な光がつくり出した通常の光触媒とは異なる現象によるものだろう。

ホフマン教授らのこの論文を根拠とする光触媒=光化学増感剤は、いまや世界に蔓延している。レーザーを使って行う水溶液中の光触媒反応の研究は、彼らと同じ手法を使ってる。そして彼らの書いた光触媒の仕組みは世界中の通説となった。科学者の真実は多数決できめるのもなのであろうか?ある時点では多数決である。いったい科学者たちは何を目指しているのであろうか?

科学者たちは何を目指しているのであろうか?←