光触媒の施工の前と後における清浄度を測定するために、キッコーマンバイオケミファ株式会社の「ATPふき取り検査(A3法)」がしばしば行われています。
汚れ度合いが10秒ほどで測定できる便利な検査で、「ルミテスター」という機械を使用することから、ルミテスターで測る、ルミテスターで検査する、などと言いならわされています。
ただし、ルミテスターを光触媒に関して用いる場合には、光触媒自体の成分に気をつけなければなりません。
ここでは、公式サイトをよくよく確認していたとしても気づきにくいルミテスター検査の「阻害物質」がある、ということをご紹介しておきたいと思います。
光触媒評価におけるルミテスターの活用については、次のような公式動画が公開されています。
(https://biochemifa.kikkoman.co.jp/kit/atp/article/article_detail_59/)
光触媒の評価のためにルミテスターを使用する際の注意点としては、動画にて
光触媒溶液にルシパックの阻害物質が入っている場合はルミテスターは使用できません。阻害物質についてはメーカーホームページをご参照ください。
とアナウンスされています。
ルミテスターは、ATPと反応して発光する「酵素」(ルシパック試薬)の発光量によってATP量を数値化しています。そのため、阻害物質を含まない光触媒であれば、「ルミテスターの数値が下がる(ATP量が減少する)」=「光触媒(酸化チタン)による有機物の分解作用が発揮されたため」だと考えられるのですが、阻害物質を含む光触媒の場合は「阻害物質の影響で酵素反応が阻害されるため」光触媒によらずとも必然的に数値が下がってしまい、肝心の光触媒効果については測定することができないのです。
ルシパック試薬(酵素)の具体的な阻害物質について、メーカーホームページの「ご使用上の注意点」に記載されているのは、食塩、エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、オスバン(塩化ベンザルコニウム10%)でした。
(https://biochemifa.kikkoman.co.jp/kit/atp/method/note/)
しかし、それらはほんの一例です。
ATP・迅速検査研究会作成「「ATPふき取り検査」Q&A集」(発表日:第23回講演会(2010年10月7日開催)」には、次のように書かれています。
Q13 酵素反応の阻害要因として、どのようなことに気をつける必要がありますか?
A13 ATPふき取り検査は酵素化学発光を用いているため、酵素反応に影響するような酸、アルカリによるpH変化、次亜塩素酸ナトリウムやアルコールなどタンパクを変性させる薬剤などが、発光量を低下させます。さらに、塩素(食塩などの塩に含まれるものも含めて)や重金属も発光量を低下させます。
特に、市場に出回っている光触媒には、ドーピング物質や助触媒として「重金属」がよく用いられています。
主に使用されているのは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、スズ(Sn)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)です。これらを含んでいる光触媒については、ルミテスターによる性能評価ができません。
ルミテスターの公式ホームページ内を探した限り、上のようなことに注意を促す記述は見つかりませんでした。そのためでしょうか、光触媒メーカーの方や施工業者の方などであっても「重金属がルミテスターの阻害物質である」ということを知らない場合があるようです。
光触媒施工にあたってルミテスター検査を行うということがあれば、光触媒に阻害物質が入っていないかどうか、ぜひしっかりと確認してください。もしかすると、パフォーマンスのためにルミテスターが利用されている、なんてこともあるかもしれません・・・。
当社が製造する「素粒子チタン光触媒」は酸化チタン単独の光触媒であり、施工表面には酸化チタンのみが付着するため、ルミテスターを使用することで、酸化チタンによる「有機物の分解作用」を評価することが可能です。
また、光触媒を施工する前には上の動画でも言われていたように「事前の清掃」を徹底的に行うことが大切です(清掃が必要ないという光触媒はまず疑いを持ってください)。現行の性能試験ではなかなか光触媒の分解効果を示すのは難しい(詳しくはこちら)ということもあり、ルミテスター検査は大変ありがたく活用させていただいております。
という悪質な製品が残念ながら存在しています。
もっとも簡単な見極め方法は、フライパンなどで水分を飛ばすことです。
酸化チタンのみであれば無臭の白い粉だけが残ります。(当社製品の水分を飛ばした写真はこちら。きちんと白い粉(酸化チタン)だけが出てきます。)異臭がする、焦げる(黒や茶色に変色する)などが起こる場合は、酸化チタン以外の何かが配合されていると判断できます。