• 素粒子チタン光触媒「REDOX」

以下、東京大学の「光触媒の新世界 市場との対話が生んだブレークスルー」
という記事から、文章や図を引用しています。

酸化チタンの作用=水中で反応する?

東京大学の「光触媒の新世界」
(https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00057.html)
には、次のように書かれています。

「酸化チタンの作用は、まず酸化チタンに光が当たって電子が励起(エネルギーの高い状態)され、この電子が他の分子に結合してこれを還元、電子が励起された跡の正電荷を持った「穴」(正孔)が分子から電子を奪って酸化する過程です。空気中や水中でこの反応を行うと、酸素が電子と、水分子が正孔と反応するといずれも活性酸素を生じ、これはアルコールや植物の葉さらにゴキブリまでも酸化し、二酸化炭素にまでも分解する作用を持ちます(図1)。
そこでこの反応性を利用して、汚染水や大気の浄化を行おうという研究が1980年代の中頃から熱心に行われましたが、大量の水や大気を処理することはできず、研究は行き詰まりました。

↑この反応図は間違い。
酸化チタンは水と反応しません。

酸化チタン単独では水の光分解・光酸化を起こさない。

一方、佐藤しんり氏(北海道大学)による「サトシンの光触媒のページ(https://satoshin.web.fc2.com/photocat/index.html)の、
光触媒入門—12.半導体光電極反応と本多・藤嶋効果」には、次のように書かれています。

酸化チタン単独でも本多・藤嶋効果があると書いてある本がありますが、間違っています。半導体光電極セルで対極の白金がなければ本多・藤嶋効果が起こらないように、金属のついていない酸化チタンでは水の光分解あるいは水の光酸化は起こりません。~酸化チタン単独の光触媒作用の仕組みは、実用化こそされませんでしたが、本多・藤嶋効果発見の前からわかっていたことです。

本多・藤嶋効果は光電気化学反応であって、光触媒反応ではありません。そして、酸化チタンの光触媒反応には水が必要なく、水があったとしても反応が促進されることはありません。

酸化チタン単独の光触媒作用によりゴキブリまで酸化・分解するというのは、再現実験できるのなら是非やっていただきたいものです。直後に「大量の水や大気を処理することはでき」なかったと書かれているように、酸化チタン光触媒によって発生する活性酸素は、カビの胞子を分解することはできても、繁殖してしまったカビを分解・除去することはできません。大量の物質を処理することには向かないのです。

ゴキブリを酸化・分解できるほど強力なモノが、人間の皮膚に直接触れる化粧品や日焼け止めにも配合され、安全に利用されているのはおかしいとは思われませんか?

酸化チタン光触媒コーティングは「超親水性」?

また、東京大学の同記事には、光触媒の転機は「超親水性」の発見にあり、酸化チタン光触媒をコーティングした表面は「超親水性」になるために、自己浄化効果つまり防汚機能を長期間発揮すると書かれています。

しかし、燃焼させるとアナターゼ型酸化チタンのみが検出される、正真正銘の酸化チタン単独の光触媒である当社製品を施工した表面は「疎水性」になることが確認されており、酸化チタンが「疎水性」であるからこそ、汚れても落としやすい防汚効果が持続的に発揮することができることがわかっています。

東大の黄ばんだトイレの便器を眺めていた時、酸化チタン光触媒がゴキブリを分解できるなら、黄ばみの原因菌も分解できるのではないかとひらめいた
~早速、つてをたどってTOTO株式会社(当時:東陶機器株式会社)との共同研究が開始されました。〜
この共同研究の中で見つかったのが「超親水性」という現象でした。酸化チタン光触媒をコーティングした表面は、極めて水になじみやすくなり、水をかけても薄い膜となって流れてゆきます(図2)。これは学術的に新規な現象であり、1997年やはりNature誌に掲載されました。
これは、光触媒の効果によって油汚れが分解されること、また酸化チタンの酸素が光照射によって抜け落ち、これが水分子と反応して水酸基を作ることにより、表面と水分のなじみがよくなることによります。これによって汚れは洗い流され、長時間自己浄化効果が持続します(図3)。

↑酸化チタンは疎水性(水を嫌う性質)であり、
水と反応しない=図のような水酸基は作られません。

酸化チタンは「疎水性」

酸化チタン単独の光触媒をコーティングすると、撥水でもなく親水でもない「疎水性」のコーティングとなります。チタン被膜は水になじみにくく、水玉は浮いたようになって流れやすくなり、水玉が大きくなると流れ落ちます。表面に水滴が残りにくくなるため、ホコリなどの汚れが付きにくくなり、汚れても落ちやすく、水洗いした後も拭き取りがラクになります。

しかし、ガラスコーティングのような「親水性」のコーティングの場合、水が付着すると水滴にならずに広がります。表面が水滴となじむため、濡れた状態が続きやすく、かえって汚れが付着しやすい状態となってしまいます。汚れている雨水等が広がり続けるような機能を施工面に付与しているのです。

現在、車のボディへのコーティングとして、疎水性コーティングが注目されているのも納得されます。

未だ市場展開されない「新しい光触媒」

さらに、東京大学の同記事によると次のような「新しい光触媒」が2014年に市場に出る予定であったことがわかります。

これまでの酸化チタン光触媒の難点は、太陽光線のうち紫外線のエネルギーしか使えないため、屋外など強い紫外線の当たる場所でしか、その性能が発揮できないという点です。可視光線のエネルギーが利用できれば、酸化チタン光触媒の応用にとって革命となります。〜

その解決策は、酸化チタンの表面に、鉄あるいは銅イオンから成る「助触媒」を付着させる方法でした。こうすると、酸化チタンから助触媒へ電子が直接励起される「光誘起界面電子移動」が起き、エネルギーの低い可視光でも十分利用が可能になります。また、この助触媒は2つの電子を受け取って酸素を還元でき、この段階の反応効率をも大いに高めます。この2つの効果の合わせ技により、従来の10倍以上の反応効率を実現したのです(図5)。〜

「新しい光触媒は、紫外線を含まない蛍光灯の光を照射するだけで、感染性ウイルスを大幅に不活化させます。すでに空港や病院などで検証試験が行われ、優れた抗菌・脱臭作用が確認されています。2014年中にこの新しい光触媒を利用したフィルムやペンキ、ガラスなどが製品化され市場に出る予定です」。
今後この新しい光触媒は、室内の揮発性有機化合物やアレルゲンの除去、壁紙や床材、空気清浄機などへの応用が期待されています。「市場との対話」から生まれた新たな光触媒は、今後も産学連携の良きモデルとなりそうです。

↑この反応図は、酸化と還元の位置が違う。
一時的な反応で継続できません。

しかし、未だにこの「新しい光触媒」(ドーピング光触媒)の製品化は行われていません。

誇大広告?に気をつけて

酸化チタン単体が「水中で反応する」「ゴキブリを分解する」「超親水性になって防汚効果が持続する」というのは実際にはありえません。

酸化チタンは光触媒ですが、ドープされる物質は光触媒ではありません。銀・鉄などの金属は錆びるように、ドーピング物質による効果は一時的なもの。ドーピング物質はやがて酸化チタンの光触媒作用を阻害(触媒毒)してしまい、施工面に悪影響を及ぼします。

実際、光触媒には長期的な効果は期待しがたいという認識が、ここ数年の間に少しずつ広まってきているようで、特に施工に関わる方からの不信感が高まっているということを耳にしています。